公正証書を作るとき、どこまで決めておくべき?必須項目と、決めていないと揉めやすいポイント
第1弾では「口約束のままの養育費は危険」というお話をしました。 第2弾では、公正証書にすることで養育費が“法的な力”を持つこと、そして強制執行の仕組みについてお伝えしました。
では実際に、公正証書を作るとき どこまで細かく決めておくべきなのか。
今回は、養育費の公正証書を作成するときに 必ず決めておきたい項目と、決めていないと後々トラブルになりやすいポイントを整理してお伝えします。
公正証書で必ず決めるべき基本項目
まずは、どの家庭でも必ず記載するべき内容です。
1 養育費の金額
毎月いくら支払うのか。 算定表を参考にしつつ、家庭の事情に合わせて調整します。
2 支払期間
子どもが何歳になるまで支払うのか。 高校卒業まで、大学卒業までなど、家庭によって異なります。
3 支払方法
振込か手渡しか。 振込の場合は、口座情報まで記載します。
実際には、手渡しのメリットはなく「振込」で作成します。
振込は支払いの記録が確実に残るため、トラブルを防ぎやすく、未払いがあった際にはそのまま強制執行の証拠として使えるという大きなメリットがあります。
4 支払日
「毎月○日までに支払う」と具体的に決めます。
5 強制執行認諾文言
差し押さえができるようにするための重要な文言です。 これがあることで、裁判を経ずに強制執行へ進めることができます。
この5つは、公正証書の“核”となる部分です。
家庭ごとに調整すべき項目
ここからは、家庭の状況によって大きく変わる部分です。
1 ボーナス払いの有無
ボーナスがある職場なら、年2回の追加支払いを取り決めることもできます。
2 医療費・教育費の扱い
医療費は予測が難しいため、 「高額な医療費が発生した場合は折半する」などのルールを決めることがあります。
教育費も同様で、塾・習い事・受験費用などをどう負担するかは家庭によって大きく違います。
実務で特に多いトラブル例
ここからは、実際の相談で非常に多いトラブルをもとに、 公正証書で決めておくべき内容を深掘りします。
1 面会交流がうまくいかず、養育費の支払いに影響が出るケース
法律上、面会交流と養育費は完全に別問題です。 しかし実務では、この2つが感情的に結びついてしまい、支払いが不安定になるケースが多くあります。
よくある例としては、
- 面会交流の約束が守られない
- 子どもが会いたがらない時期がある
- 相手が新しい家庭を持ち、交流が減る
- 連絡が取りづらくなる
こうした状況になると、支払う側が 「会わせてもらえないのに、養育費だけ払うのは納得できない」 と感じてしまい、支払いが遅れたり、減額を求めてくることがあります。
しかし、法律上は面会交流の状況にかかわらず、養育費は支払う義務があります。
そのため、公正証書の段階で
- 面会交流と養育費は別問題であること
- 面会交流が不調でも養育費は支払うこと
- 面会交流のトラブルは別途協議すること
などを明確にしておくと、後々のトラブルを大きく減らすことができます。
2 進学で費用が増えたのに、追加負担のルールがなく揉めるケース
進学は、養育費トラブルの中でも特に多いテーマです。
高校・大学・専門学校への進学は、 学費・教材費・交通費・受験料など、想像以上に費用がかかります。
実務でよくある例としては、
- 高校の制服・教材費が10万円以上かかる
- 大学の入学金・授業料で年間100万円以上必要
- 塾や予備校の費用が月3〜5万円
- 受験料が1校あたり3万円前後かかる
こうした費用が発生した時に、公正証書で追加負担のルールを決めていないと、
「そんなに払うとは聞いていない」 「養育費に含まれていると思っていた」
といったトラブルが起きやすくなります。
特に大学進学は、家庭の価値観によって大きく意見が分かれるため、 事前にルールを決めておくかどうかで、後々の安定度が大きく変わります。
公正証書では、
- 高額な教育費が発生した場合は協議する
- 進学時の費用は折半する
- 受験料・入学金は一定割合で負担する
など、将来の変化に備える文言を入れておくことが多いです。
「うちはどこまで決めるべき?」と迷う方へ
ネットの情報は一般論が多く、 自分の家庭に当てはまるかどうか判断するのは簡単ではありません。
相手が協力的かどうか 収入の状況 子どもの年齢 面会交流の安定性 進学の可能性 親の転職・転居の可能性
これらによって、最適な内容は大きく変わります。
初回相談では、状況を丁寧に整理しながら、 どこまで決めておくと安心かを一緒に考えていきます。
無理に依頼をすすめることはありませんので、安心してご相談ください。
おわりに
公正証書は、争うための書類ではありません。 子どもの生活を安定させるために、親ができる準備のひとつです。
養育費の取り決めは、どうしても迷いや不安がつきまといます。 「どこまで決めればいいのか」 「相手と話し合えるだろうか」 こうした気持ちを抱えるのは、とても自然なことです。
公正証書の内容は、家庭ごとに最適な形が違います。
正解がひとつではないからこそ、専門家に相談することで、 「何を決めるべきか」「どこは柔軟でいいのか」がはっきりしていきます。
実務では、相手との話し合いが難しい場合でも、 専門家が間に入ることでスムーズに進むケースが多くあります。 直接伝えづらいことを代わりに整理したり、感情的なやり取りを避けたり、 必要なことだけを淡々と進めることができます。
次回予告
次回は、公証役場での手続きの流れについてお話しします。
安心して進められるよう、できるだけ分かりやすく解説したいと思います。
